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百年後に漱石を読む

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ISBN: 978-4-901510-76-9

内容紹介
『それから』の三千代の顔色は、なぜ赤くなったり蒼くなったりするのか。『門』の宗助が取り戻したかったものとは。『心』の三人にはなぜ名前がないのか。『吾輩』が鼠を取らないと決心した訳は、そして迷亭はなぜ法螺ばかり吹くのか。斬新な読みを展開する文学批評の冒険。

目次
Ⅰ モナ・リザと吸血鬼 『それから』を循環する血と金

1 「宿命の女」
2 那美という形象
3 三千代の顔色
4 スパーマティック・エコノミー
5 白百合の香を嗅ぐ
6 禁じられた男性間エロス
7 神経衰弱と変質論
8 自慰の問題の核心
9 夢の中で逢う
10 愛するのは心か脳か

Ⅱ エロスの変容 『門』のホモソーシャルな欲望

1 身体の近代化
2 泥棒のモチーフ
3 喪われた絆を求めて
4 宗助が盗んだもの
5 夜の冒険者たち
6 落魄の予感
7 他者としての女
8 現在を呪う過去

Ⅲ もう一つの聖書物語 『心』における血の盟約

1 鮮烈な赤
2 なぜキリスト教なのか
3 血のメタファーの変転
4 ワイルドの「イエス論」
5 三人には名前がない
6 室内空間の構造
7 三角関係の解剖学
8 童話「漁師とその魂」
9 転倒する主体と客体
10 同性愛エロスの発動
11 Kの「復活」
12 名辞の彼方へ

Ⅳ 作家の誕生 『吾輩は猫である』の虚と実

1 講義と実作の同時進行
2 苦沙弥の写生画はなぜ失敗したか
3 固有名の虚構の逆説
4 滑稽と諷刺の源泉
5 分身としての苦沙弥と迷亭
6 虚構とリアルの関係
7 危うく名付けられかけた猫
8 なぜ鼠を取らないのか
9 ファルスとしての博士号
10 鉄の男と山の芋
11 寒月の真意と両義性
12 禿を隠す女たち
13 衣服という記号
14 古井武右衛門君の艶書事件
15 夏目漱石の誕生

あとがき

著者略歴
宮崎 かすみ【著】
宮崎かすみ(みやざき かすみ)
1961年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程中退。専攻、英文学・思想史。横浜国立大学を経て2009年4月より和光大学表現学部教授。編著書に『差異を生きる—アイデンティティの境界を問いなおす—』(明石書店)、訳書にアルベルト・メルッチ『現在に生きる遊牧民—新しい公共空間の創出に向けて—』(岩波書店、共訳)などがある。

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