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信長

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ISBN:9784798701752

内容紹介
信長が時代をつくったのではなく、時代が信長を要請した

 残虐、勤王、革新、そしてその否定……。時代によって移り変わる信長の評価だが、歴史学が示すべきは「なぜ、信長によって戦国時代は終焉を迎えたのか」という問いへの答えだ。
 そう考えるのは、信長を英雄視することでも、普通の大名であると単に旧説を否定することでもない。後に江戸幕府となっていく、ひとつの大きな権力が準備される過程で、信長という存在が生まれてきた。それは、信長の個性が時代をつくったのではなく、時代が彼を要請したのだと捉えられる。本書はそうした歴史の構造を明らかにするものである。
 宗教、土地、軍事、国家、社会から見た「歴史的人間」としての信長の姿を日本史の中に位置付ける。
目次
序 なぜ、いま「信長」を考えるのか

信長は革新的な人物か、普通の大名か
「歴史的人間」としての信長

信長の生涯

第一章 信長と宗教

比叡山焼き討ちのむごさ
耐用年数を超えていた既成仏教
神秘主義から合理主義へ
信長の敵は誰か
高野山の生産構造
一向宗と一神教の共通点
信長はなぜ一向宗を敵視したのか
信長は宗教に寛容だったか
神になろうとした信長

第二章 信長と土地

「公地公民」というフィクション
開発領主とは何か
武士の誕生
荘園はなぜ生まれたか
鎌倉幕府はなぜできたか
幕府が土地を与えるカラクリ
土地から貨幣へ
非常に狭かった室町幕府の統治範囲
戦国大名の誕生
信長・秀吉の一職支配
自由と平等はいかにして生まれたか

第三章 信長と軍事

長篠の戦いにおける「鉄砲」の意味
何が戦国時代を終焉させたか
兵種別編成の可能性
兵種別編成の威力を「実験」してみる
桶狭間の戦いでいたかもしれない「プロの戦闘集団」
サラリーマン化する武士
土地よりも茶碗を欲しがった滝川一益
鉄砲と経済力の関係
信長はどうやって鉄砲を調達したか
城郭と天守閣という発明
秀吉のロジスティクス
勝つべくして勝っていた信長

第四章 信長と国家

信長の花押の秘密
日本はひとつの国か
日本に古代はあるか
日本の成り立ちを考える
東北・関東は「国外」だった
さらに縮まる平安時代の日本
鎌倉・室町時代の関東と都
東北でのデタラメな人事
戦国時代に生まれた「おらが国」
「天下布武」の意味
関ヶ原の戦いの謎

第五章 信長と社会

戦国時代はパラダイスだったか
神(しん)君(くん)伊賀越え——なぜ家康はそんなに苦しんだのか
廃仏毀釈の真相
『政基公旅引付』に描かれた農民の交渉力
農民たちのシビアな現実
税のシステムで「公平」を実現した信長

終章 歴史的人間とは何か

源頼朝と義経の関係
歴史を動かすのは何か
鎌倉から室町へ、時代の移行を読み解く
なぜ歴史学は明治の花形だったのか
V字型歴史観への疑問
信仰としての皇国史観
戦後の唯物史観
歴史嫌いを増やした戦後の教育
歴史学の現在
再考する、歴史的人間とは何か
歴史的人間としての信長
著者略歴
本郷 和人【著】

1960年東京都生まれ。東京大学史料編纂所教授。文学博士。東京大学文学部卒業、同大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。石井進氏、五味文彦氏に師事。専攻は日本中世政治史、古文書学。『大日本史料』第5編の編纂に携わる。NHK大河ドラマ「平清盛」の時代考証を務めるなど、歴史を広く伝える活動も行う。著書に『天皇の思想』(山川出版社)、『日本史のツボ』(文春新書)、『乱と変の日本史』(祥伝社新書)、『日本中世史の核心』(朝日文庫)など。

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